3Dプリンターフィラメント種類と特徴のまとめ

3Dプリンターフィラメントとは

フィラメントとは、FDM(熱溶解積層法)や材料噴射の3Dプリンターでデータを出力するために用いる専用材料です。また、3Dペンも3Dプリンター用のフィラメントを使用します。ABSやPLAが対応しています。※インクジェットプリンターで言うカートリッジです。

形状は直径1.75mmと2.85mmの2種類あり、細長い糸状のものです。大抵はリールに巻き付けて販売されています。

フィラメントは、合成樹脂の「熱可塑性樹脂」と呼ばれるもので構成されています。

熱可塑性樹脂とは

熱を加えると柔らかくなり、冷やすと固まる性質をもった樹脂です。

3Dプリンターのフィラメント種類とプリンター対応表

種類用途対応プリンター
ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)最終品、日用品、工具、ブロック幅広いプリンターで使用可能です。・Creality Ender 3 Pro
・Creality Ender 5 Plus
・VOXELAB Aquila
・TL-D3 Pro
PLA
(一般的にはポリ乳酸)
試作品幅広いプリンターで使用可能です。・Creality Ender 3 Pro
・Creality Ender 5 Plus
・VOXELAB Aquila
・TL-D3 Pro
強化PLA耐久性が高い試作品
PETG容器入れ物・Creality Ender 5 Plus
・VOXELAB Aquila
・TL-D3 Pro
ASA外装、カバー
ポリカーボネートパーツ・Creality Ender 3 Pro
ナイロンエンジニアリング用途・QIDI TECH 3Dプリンター
TPUスマホケース・Creality Ender 3 Pro
・Creality Ender 5 Plus
・TL-D3 Pro
PVB奇抜な花瓶、宝石、ランプ、その他のアート作品基本的にはPLA対応プリンターでOK
木材(wood)アート、模型、作品・Creality Ender 3 Pro
・Creality Ender 5 Plus
・TL-D3 Pro
金属アート、模型、作品
HIPS(サポート材)サポート材・TL-D3 Pro
PVA(水溶性サポート用)サポート材・TL-D3 Pro
鋳造用

3Dプリンター用フィラメント材料の詳細

ABS

合成樹脂の一種。アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)の頭文字とってABS。

印刷時の温度はPLA樹脂に比べて高い。そのため高い温度でなければ印刷できません。(230-260度)高温で溶かす関係で、冷えた時の収縮を起こしやすく大きい造形ではひずみが生じ変形しやすい。

他の材質と比べ粘着性、柔軟性に優れており強度があります。曲げや伸びに強い。後工程のやすりがけ作業や着色なども簡単で扱いやすい。試作品やプラモデル、フィギアのパーツに向いている。

また、屋外で使用しても劣化しづらいという性質もあります。

【特徴】

・強度と耐衝撃性、加工性、曲げ疲労性に優れる。
・有機溶剤には溶けるが、
 酸性溶液やアルカリ溶液には溶けない。
・直射日光には劣化しやすい
・耐薬品性には劣る
・冷えると縮む
・密閉空間でプリントが良い

【注意点】

設置面積が広いと反りやすい。また、フィラメントは十分乾燥が必要で、湿度が高い環境だと反りやすくなる。

【用途】

  • 日用品
  • 家電製品
  • 自動車パーツ
  • おもちゃのブロック
  • 治具などの幅広い工業製

PLA(一般的にはポリ乳酸)

トウモロコシや砂糖きび、ジャガイモなどの糖含有植物由来のポリ乳酸樹脂組成物で、環境に優しい。また、造形物を土に埋めると自然分解される。プリント安定性に優れている。

※乳酸から作られたポリエステルとも言えます。

ABSと比べると180-230℃程度で印刷が可能です。表面は硬くて丈夫ですが、削ったりやすりがけをする後行程は不向きで塗料も馴染みづらいです。後行程はABSより比較的苦労します。

ただし、出力中に嫌な臭いは発生しません。


・簡単に安定した造形を得ることができる。
・ホットエンドでの詰まりが起きやすい
・PLAは溶けるとくっつきやすく伸びやすい。
 ※ホットエンドに油を1滴で解決できるらしい
・60度以上になるような環境での使用は向かない。
 その温度で変形してしまう。
・他のプラスチックより強度は弱い

【用途】

  • プロトタイプ
  • 模型

強化PLA

従来のPLA樹脂の曲げ性や柔軟性、強度、耐熱性などを大幅に向上させたPLA樹脂素材。耐熱性も約90度近くまで耐えられる。

PET(ポリエチレン・テレフタレート)/PETG

PETは、ペットボトルの素材として使用されている熱可塑性樹脂です。PETGは、PETの強化素材です。ABSフィラメントとPLAフィラメントの強みを合わせた材料です。ABS並みの強度とPLAのプリント性能を併せ持ち高い強度で、最も使いやすい材料の一つです。またPET以上の透明性のある素材です。ただし、3Dプリンターで造形するとペットボトルほどの透明なものはできません。

【注意点】
造形中に糸引きが起きやすい。
※造形に蜘蛛の糸のような細い糸が付着する現象
PETGフィラメントは吸湿性が高く。ノズルの温度やプラットフォームのベッド温度も繊細なコントロールが必要となる。温度が高すぎると糸引きが起きる。

【用途】

  • ペットボトル
  • 容器
  • 入物
  • カバー

エポキシ系樹脂

エポキシ系樹脂は、熱を加えると硬化する、熱硬化性の液体樹脂です。別名レジンとも言われています。電子部品や接着剤、コンポジット材料や塗料などに使用されています。

エポキシ系樹脂は、高い絶縁性能、耐水性、耐食性、耐熱性、接着性、安定性と耐薬品性に優れていること。ただし、紫外線には弱いため屋外や紫外線量が多い環境での使用は向かない。また、靭性も低い。低温化での効果も遅い

エポキシ系樹脂で一般的な素材は、ABSライクとPPライク。どちらも紫外線で硬化する液体樹脂で、光造形方式(SLA方式/DLP方式)で使用されます。

ABSライクは、ABS樹脂よりもやや強度が劣るため、ABS樹脂の代替としての使用にはあまり向きません。

アクリル樹脂

アクリル樹脂は、透明度の高い熱可塑性樹脂です。耐衝撃性と耐候性に優れており建材や車両によく使用されています。ただし、3Dプリンターでは高い透明性を再現できないこと。また、表面に傷がつきやすい性質があります。

ASA樹脂

ABS樹脂のブタジエンを、アクリレートに置き換えた熱可塑性樹脂です。ABSの耐久性に耐候性が加わったフィラメントです。カバーや自動車外装部品、建材、屋外用など野外で使用する造形に最適

【用途】

  • 外装
  • カバー
  • 屋外用パーツ
  • 建材

PP(ポリプロピレン)樹脂

PP樹脂は、熱可塑性樹脂で、よく耐熱容器などに使用されているプラスチックです。耐熱性や耐衝撃性、耐薬品性に優れており軽い性質があります。冷やしたとき収縮率が高いためFDM方式では難しい素材です。

主に粉末焼結方式(SLS方式)で使用されていましたが、最近は、熱溶解積層方式(FDM方式)向けのPP樹脂フィラメントも登場しています。

ポリカーボネート(PC)樹脂

高強度と耐衝撃性。荷重たわみ温度は100度を超える。また、過酷な環境でも強い物性を発揮するエンジニアリングプラスチックです。プラスチックのなかでは最高レベルの強度。屋外でも使用することができ、研磨すると美しい光沢を放ち高級に見えます。ただし、高温多湿環境には弱い。

エンジニアリングプラスチック(エンプラ)とは

プラスチックが登場した当初は「プラスチックはもろくて割れやすい」というイメージがあったため、その後の研究開発で、工業用の過酷な環境でも使用に耐えられるようなプラスチックが登場しました。そのすべての合成樹脂の総称をエンジニアリングプラスチック(エンプラ)といいます。


【注意点】
非常に高温の設定を求められる・
フィラメントによっては、290度~300度程度必要
プラットフォームからの着脱がしづらい
着脱を容易にする専用シートの使用が推奨

【用途】

  • 治具
  • 取り付け具
  • 工具

ナイロン

ナイロンは様々な工業製品に使用されており、強度と耐熱性を持つエンジニアリングプラスチックです。アパレル製品や自動車パーツに使用されています。FDM方式の造形は難しく、粉末焼結方式(SLS方式)で一般的には使用されます。

強靭で優れた強度と耐衝撃性、耐熱性に優れるあらゆる用途に使用できる万能材料です。エンジニアリング・プラスチックとして高い耐熱性を誇り高温下の環境でも強度と耐久性を発揮します。フィラメントの種類によっては、180度まで耐えられる。

耐薬品性や耐油性にも優れており、酸に対しては綿の10倍の強度を持つ。

吸水性により耐衝撃性や柔軟性が増す

ナイロンフィラメントでは最終品パーツを作ることができます。

【注意点】

非常に吸湿性が高いので、プリント中や保管中は十分な乾燥が必要。また、反りが起きやすい。乾燥BOXや乾燥した部屋及び3Dプリンターなどを密閉するなど対策が必要がです。

TPU

熱可塑性ポリウレタン(TPU)をベースにしたフィラメント材料

  • 柔軟性に優れ、引張強度に優れる材料
  • 繰り返し曲げ伸ばしができる。
  • 耐摩耗性や耐衝撃性に優れている
  • PUフィラメントのコントロールは非常に難しく、
  • 専用押出ノズルが必要になったりします。


【注意点】
フィラメント自体も柔らかいことからノズル詰まりや
造形物がプリント中に歪む不具合が発生する
※対策:プリントスピードを遅くする。20mm/sから40mm/s程度
フィラメントスプールの位置調整し
フィラメントが引っ張られて伸びることを防止

【用途】

  • スマホケース
  • ホース
  • カバー
  • 靴底
  • サンダル

PVB

家庭用の3Dプリンターは積層あとが造形物に残ってしまいますが、この積層後を残さないフィラメントとなります。造形後は専用の研磨機器もしくは、「IPAアルコール」で表面を滑らかにすることができます 。ポリメーカ(Polymaker) では、専用のPVBフィラメントで造形を印刷し「Polymaker Polysher」を用いてアルコール (イソプロパノール) 処理することにより造形物表面の積層痕が消えて劇的に滑らかになります。家庭でも簡単に処理することができます。

【用途】

  • アート
  • 模型
  • 宝石
  • ランプ

【注意点】

乾燥が必要

【ポリメーカ(Polymaker) の印刷条件】

推奨プリント条件設定
・ノズル温度: 190-220 ℃
・造形テーブル温度: 25-70 ℃
・プリント速度: 40-60 mm/s
・冷却ファン: ON

と安価な3Dプリンターでも印刷することができます。

複合素材(合成フィラメント)

ABS・PLAに異素材を混ぜ込んだもの。木や竹、炭素素材、銅など混ぜ込んだものがあります。

木材(wood)

木材の質感をだすことができるフィラメント。PLA樹脂にパウダー状の木を配合することで気の質感を再現。質感はざらざらした手触りで木の香りが漂います。

60%以上高品質の竹の木を使用することで、ノズル詰まりが発生されないと言われています。

【用途】

  • アート
  • 建築模型
  • 作品

【注意点】

ノズル詰まり起きやすい。対策としてはノズル径が大きい0.5mm以上の押出ノズルを使用し定期的にノズルのギアなどクリーニングが必要。

金属

金属の質感。機種によって鉄、銅、ニッケル、チタン、シルバー、ステンレス、アルミニウムなど様々な金属素材を使用することが可能です。

【注意点】

ノズル詰まり

サポート材

3DプリンターでT字やH字など宙に浮く部分がある造形物をプリントする際に、支えとなる素材です。サポート材を使用したほうが除去作業が楽になります。シングルヘッドタイプは、押出ノズルが1本しかないため、造形する素材=サポート材となりますが、デュアルヘッドタイプは、造形素材とサポート材を分けて使用することができます。

HiPS(ABSのサポート剤)

FDM (熱溶解積層法)3Dプリンターでは、造形を安定してプリントするためにサポート材という土台をプリントする場合があります。シングルヘッドでは、ノズルが1本しかないため、印刷用のフィラメントをサポート材として使用しますので、印刷後に取り外すことが難しいことがあります。

デュアルヘッドタイプ専用ですが、取り外しに特化したサポート材専用のフィラメントもあります。

【対応プリンター】

  • TL-D3 Pro

PVA(水溶性サポート用)

FDM (熱溶解積層法)3Dプリンターでは、造形を安定してプリントするためにサポート材という土台をプリントする場合があります。シングルヘッドでは、ノズルが1本しかないため、印刷用のフィラメントをサポート材として使用しますので、印刷後に取り外すことが難しいことがあります。

デュアルヘッドタイプ専用ですが、水で簡単に溶けて取り外せる水溶性のサポート剤です。複雑な造形を取り外すのに向いてます。

【対応プリンター】

  • TL-D3 Pro

鋳造用

【特徴】

鋳造用のワックスモデルが作れる

【注意点】

乾燥が必要

純正品のフィラメント以外も使用できるのか

基本的にはメーカーの純正品を使用したほうがトラブルやチューニング(温度やヘッド移動速度など)作業は省けると思います。3Dプリンターに最適化されているため。ただし、自己責任の範囲にはなりますが、使用することは可能です。その場合は、使用するフィラメントによってチューニングする必要はでてくるでしょう。

この辺は、インクジェットプリンターでリサイクル品を使用する感覚と一緒かと思う。

すなりん

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